物理周辺の知識まとめ

ちょっとしたまとめを書きます.

ブロッホの定理の証明,定理の性質

周期ポテンシャル下の波動関数を考えることは,結晶構造を考える上で有用である.

 

ブロッホの定理の証明(添え字を一部省略している)

U(\vec{r})=U(\vec{r}+\vec{R})

とする.\vec{R}は結晶格子の並進ベクトルであると考える.

並進演算子TT^{'}ハミルトニアンHとすると

[H,T]=0

[T,T^{'}]=0

が成り立つ.第一の交換関係からシュレーディンガー方程式の固有関数\Psiを並進演算子の固有方程式の解とみなすことができる.

T_{\vec{R}}\Psi=C_{\vec{R}}\Psi

第二の交換関係から

C_{\vec{R}}C_{\vec{R'}}=C_{\vec{R'}}C_{\vec{R}}=C_{\vec{R}+\vec{R'}}

となるので

C_{\vec{R}}=e^{i\vec{k}・\vec{R}}

 以上から

\Psi(\vec{r}+\vec{R})=e^{i\vec{k}・\vec{R}}\,\Psi(\vec{r})

書き換えると結晶と同じ周期性を持つ関数uを用いて

\Psi(\vec{r})=e^{i\vec{k}・\vec{r}}u(\vec{r})

となる.

 

この定理から示される重要な概念の1つにブリルアンゾーンがある.逆格子ベクトルを\vec{G}として第一の表式の右辺で\vec{k}\vec{k}+\vec{G}と置き換えても,逆格子ベクトルの定義から結果は変わらない.

つまり波数空間上では逆格子ベクトル1つ分の領域を考えれば周期性から全ての領域について理解できるということである.

 

\Psi(\vec{r})=e^{i\vec{k}・\vec{r}}u(\vec{r})

を見ると,波動関数は全体的に平面波の性質を保っているが,結晶の周期性に応じた変化を示すことがわかる.ここから,ほぼ自由な電子の近似が妥当であることがわかる.

 

またブロッホの定理は

(単位構造の性質を表す関数)\times(結晶の性質を表す関数)

の形になっているが,この構造をした式は物性分野で多く現れ,統一的な理解に役立つ.