物理周辺の知識まとめ

ちょっとしたまとめを書きます.

便利な本

参考書のレビューが嫌いで,余程のことがなければ見ないし参考にしたことも少ないのですが,特にわかりやすいものや,確認するのに便利だと思うものもいくつかあるので,列挙します.需要から考えて,学部1・2年生向けのものに絞ってあります.何を読めばいいか悩んでいる方は図書館で探してみても良いかもしれません.著者名等一部省略しているものがありますがwebで調べると出てきます.

 

 

物理学序論としての力学

古典力学上・下(ゴールドスタイン)

解析力学量子論(須藤靖先生)

熱力学入門講義(現代物理学入門講義シリーズ)

電磁気学(岩波基礎物理シリーズ)

物質の電磁気学(同上)

量子力学I・II(小出先生)

基礎の固体物理学(斯波先生)

 

 

基本的にこれらで最低限度の素養は揃うと思います.これ以上については,その時その時必要な話題を扱った書籍やpdfにあたればやっていけるのではないでしょうか.

平衡統計力学や物理数学,誤差・統計に関しては挙げませんでしたが,最低限の素養という観点から(形式的に計算を扱うという意味で),webで調べれば十分ではないかと思ったためです.

 

 

 

 

 

次元解析に関する知識

無次元量を用いて物理現象の特徴を掴むことは時に重要である.そのための基本となる定理が,バッキンガムのΠ定理である.証明には線型代数の次元定理を用いる.

 

バッキンガムのΠ定理:

ある物理現象に関係する最小の物理量の数をm,基本単位の数をnとする時,互いに独立な無次元量の数はm-n個である.

 

以上から重要な結果を得る:

基本単位をB_{1}.B_{2},...とする.物理量A_{i}の単位を基本単位で表すと

[A_i]=\sum_{n}B_{n}^{a_{ni}}

となった時,{a_{n,m}}を行列要素にもつ行列Cを次元マトリクスという.この時互いに独立な無次元量の数は,m-rankCとなる.

 

従って,次元解析の手法は以下のようにマニュアル化される.

①.物理現象に関与する物理量を全てリストアップし,次元マトリクスCを構成する.

②.m-rankCより無次元量の数を計算する.

③.物理現象がシンプルに理解できるように②の数だけ無次元量を作成する.

 

ブロッホの定理の証明,定理の性質

周期ポテンシャル下の波動関数を考えることは,結晶構造を考える上で有用である.

 

ブロッホの定理の証明(添え字を一部省略している)

U(\vec{r})=U(\vec{r}+\vec{R})

とする.\vec{R}は結晶格子の並進ベクトルであると考える.

並進演算子TT^{'}ハミルトニアンHとすると

[H,T]=0

[T,T^{'}]=0

が成り立つ.第一の交換関係からシュレーディンガー方程式の固有関数\Psiを並進演算子の固有方程式の解とみなすことができる.

T_{\vec{R}}\Psi=C_{\vec{R}}\Psi

第二の交換関係から

C_{\vec{R}}C_{\vec{R'}}=C_{\vec{R'}}C_{\vec{R}}=C_{\vec{R}+\vec{R'}}

となるので

C_{\vec{R}}=e^{i\vec{k}・\vec{R}}

 以上から

\Psi(\vec{r}+\vec{R})=e^{i\vec{k}・\vec{R}}\,\Psi(\vec{r})

書き換えると結晶と同じ周期性を持つ関数uを用いて

\Psi(\vec{r})=e^{i\vec{k}・\vec{r}}u(\vec{r})

となる.

 

この定理から示される重要な概念の1つにブリルアンゾーンがある.逆格子ベクトルを\vec{G}として第一の表式の右辺で\vec{k}\vec{k}+\vec{G}と置き換えても,逆格子ベクトルの定義から結果は変わらない.

つまり波数空間上では逆格子ベクトル1つ分の領域を考えれば周期性から全ての領域について理解できるということである.

 

\Psi(\vec{r})=e^{i\vec{k}・\vec{r}}u(\vec{r})

を見ると,波動関数は全体的に平面波の性質を保っているが,結晶の周期性に応じた変化を示すことがわかる.ここから,ほぼ自由な電子の近似が妥当であることがわかる.

 

またブロッホの定理は

(単位構造の性質を表す関数)\times(結晶の性質を表す関数)

の形になっているが,この構造をした式は物性分野で多く現れ,統一的な理解に役立つ.

 

 

 

極座標ラプラシアン,発散,回転の簡単な導出,一般の座標系への応用

Gaussの定理

 \int\vec{\nabla}・\vec{A}dV= \int{\vec{A}・\vec{dS}}

において左辺の積分範囲を微小にすると

 dV\vec{\nabla}・\vec{A} =\int{\vec{A}・\vec{dS}}  

となる.以上までは座標系に依存しない議論であるから,実際に右辺を微小領域について計算してからdVで割れば,座標系に応じた発散が求められる.

 \vec{A}\nabla{B}と置き直せばラプラシアンを計算できる.

変数変換を馬鹿正直にやる方法よりはるかに簡単である.

 

同様の対応がStokesの定理と回転にも存在する.

\int(\nabla\times\vec{A})・\vec{dS}=\int\vec{A}・\vec{ds}

において左辺の積分範囲を微小にすると積分の外にrot(の各成分)をくくりだすことができる.ここまでは座標系に依存しない議論であるから,右辺を実際に計算することで 座標系に応じた回転を求められる.